こんにちは。はなです。
フジテレビ系列28局が、番組制作能力の向上を目指す目的で1992年に設立されたドキュメンタリー番組のコンテスト『FNSドキュメンタリー大賞』。
今年は第28回目となります。
系列局の福井テレビが開局50周年記念番組として制作した『聖職のゆくえ~働き方改革元年~』。
関西で放送されるのを心待ちにしていたのですが、先日ようやく深夜枠で関西でも放送されたので見ました。
今日はその感想です。
福井テレビ開局50周年記念番組『聖職のゆくえ~働き方改革元年~』まとめ
教員の働き方改革が叫ばれる令和の時代ですが、遅々として進んでいません。
このままでは教育現場が危ない。
この国の将来が危ない。
番組が福井県の公立中学にて自殺や病気でなくなった教員のご遺族と現場の教員に5か月間密着取材し分かった事は、教員の過酷な労働環境でした。
2人の亡くなられた教員の事例
工藤先生の場合
享年40歳。
神奈川県から福井県に異動、割り振られた校務分掌(※)は17種類。
修学旅行から帰って6日後、病院の待合室で倒れそのまま亡くなりました。
直接の死因はくも膜下出血。
公務災害の申請を行うも、超過勤務の証明ができず却下。
過労死を認められるまで4年10か月がかかりました。
なぜ超過勤務の証明が難しかったのか、それは学校が労働時間を管理していなかったからです。
嶋田先生の場合
享年27歳。
何度も採用試験に挑戦し、憧れの先生になったばかり。
朝は6時半ごろに学校にいき、日付が変わったころに帰宅。
1年目から1年生の担任と野球部の副顧問を担当しましたが、10月に自殺。
嶋田先生が学校で使用していたパソコンをご遺族が調べると、自殺する前の月の超過勤務時間は170時間ということが判明。
2000年から精神疾患で休職する教員が急増
(引用元:聖職のゆくえ~働き方改革元年~)
2000年を境に精神疾患で休職する教員が急増、2007年から毎年5000人が精神疾患を理由に休職しています。
精神疾患にかかった先生は一様に「自分の力不足」ととらえ、ご自分を責められるそうです。
諸悪の根源「給特法」
取材した教員たちの多忙さはすさまじいにも関わらず、管理職によって時間管理がなされていない事が取材で分かりました。
なぜそんな事がまかり通っているのか。
その原因は、1971年に制定された公立の教員にのみ適用される法律「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」略して「給特法」にありました。
時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、基本給の4%(8時間の時間外労働に相当)を教職調整額として月額給与に上乗せする
つまり、
基本給の4%を支払うだけで定額働かせ放題!!
という悪法なのです。
制定された当時、教員の月当たりの時間外労働は8時間でした。
現在の教員の月当たりの時間外労働は80時間。
といっても時間外の管理ができていない現状ではこの数字も怪しですが、給特法が制定された当時の10倍です。
なぜ残業手当を支給する、という考えは取らないのか。
それは、
という考えによるものです。
しかし、給特法という法律について当の教員の間では認知されていない様子でした。
この法律のもと、公立校の教員は業務が追加され超過勤務が増えようとも、国も自治体も財政上まったく圧迫を受けないという仕組みになっています。
ゆえに、過労死ラインを超える長時間労働に歯止めがかからないのが現状です。
なぜ50年も前に制定された法律がそのままなのか。
時代が令和になった今、見直すべきではないのでしょうか?
給特法の改正を求め、文科省に3万の署名を直接届けた現職教員にも番組は密着。
番組が文科省に取材をすると、
- 勤務実態を調査中
- 給特法に関する議論は引き続き考えていきたい
という回答でした。
法改正が現実となると、年間9000億円を超える新たな人件費が発生します。
法改正は急を要すると思いますが、省庁はなかなか動きそうにないですね。
教員のおかれた労働環境を変えるには、
- 給特法の改正で労働時間の上限を設定
- 教員の増員
- 学校の業務を減らすこと
たったこれだけなんです。
でも、これがなかなか進まない。
もたもたしている間にも、多くの教員が過重労働で体を壊し、退職し、命を失う。
一刻も早く「聖職という名の呪縛」から教員を解放し、教員の労働環境を整える事が目下の急務です。
教員の労働環境は生徒の学校生活に直接影響する
私は「多文化共生サポーター」という外国人生徒とその家族のサポートとして、一時期公立中学校に非常勤として勤務していました。なので学校の内側の実情も多少なりは把握しています。
先生方の忙しさは本当に過酷で、忙しすぎるが故なのか常にイライラして怒鳴りちらす先生がいたり、生徒へこんな感情的な指導をして良いものかと感じる事がたびたびありました。
そんな学校内の雰囲気を目の当たりにして、教員の労働環境が整わないと生徒はまともな教育を受ける事ができないとさえ感じました。
教員の第一の仕事は勉強を教える事だと思いますが、それさえも十分に準備する時間なんてないのではないかと思われる現状です。
何で日本の教員はこんなに辛そうなんだろう・・・・?
海外の教員とはすべてがあまりに違いすぎます。
教育をないがしろにする国は衰退します。
今教育制度の大改革を行わないと、この先どうなるのでしょうか?
また番組内で過労死された工藤先生の奥様はこうおっしゃっています。
「先生が現場で死ぬのを見せるのは、子供にとってあってはならない最悪の教育」と。
娘の中学時代の担任の話
娘が中学2年の時の担任T先生は、唯一きちんと娘の不登校に向き合ってくれた先生です。
T先生は自分の思考や論理、やり方を押し付ける事はせず、娘の思いにしっかり耳を傾けてくださいました。
T先生はフィンランドの教育制度に感銘を受け、教師の道を志した若い女性の先生。
初めて担任を受け持つことになったのが娘のクラスでした。
でもその年から、T先生は職員朝礼の時間が過ぎても学校に来なかったり、髪はぼさぼさで化粧もきちんとしていない事が日に日に多くなりました。
T先生は激務とストレスが原因で体調を崩され、娘が3年生に上がる時に教師を退職されました。
生徒にしっかり向き合うほど時間が足りなくなっていく現実。
T先生に「来年も娘の担任になっていただけたら嬉しいです」と伝えた時の先生の苦い表情を思い出すと、胸が痛くなります。
息子と娘が中学校に通った計6年の間に、何人の先生が病気退職されたでしょうか。
一番多かったのがうつ病です。
番組でも教員の精神疾患が取り上げられていましたが、誇張でもなく現実の話なんです。
給特法の改正だけでは教員の働き方は改革できない
給特法を改正し、教員の労働時間の上限を設定する。
そうすれば超過勤務を制限する事ができる。
果たしてそれで本当に教員の働き方を改革できるのでしょうか?
答えはもちろん「否」です。
上限を超過する場合もサービス残業や持ち帰り残業になるのは目に見えています。
民間企業でもそうですから。
そうなっては法改正は無意味になってしまいます。
ゆえに法改正と共に、教員の増員と業務負担の軽減の同時進行が必須です。
教員の働き方改革には断捨離とアップデートが不可欠
子供二人を公立小学校と中学校に通わせましたが、今の公立学校、特に公立中学に関しては疑問に感じる事だらけでした。
一保護者として感じる事、それは国の教育制度や法律に欠陥があるという点だけではなく、学校や教育委員会に悪習を断ち切る自浄能力が欠如しているということです。
こうすれば良いのに、と保護者目線で感じた点をいくつか書き出してみました。
多くの保護者が同じように感じていると思います。
無駄なブラック校則とその指導時間
中学校は本当に無駄な校則がたくさんありました。
以下は私の子供たちが通った中学の校則一例です。
- 下着は白指定
- 靴下は白指定、ワンポイントも不可
- タイツ、パンスト禁止
- 靴は白のスニーカーで、メーカーロゴが入っているものは禁止
- 眉を整えてはいけない
- ツーブロック禁止
- 制汗剤は禁止
- 髪留めはパッチンどめは禁止
- マフラーや手袋は紺か黒
私は公立中学出身ですが当時の校則はこんなに細かくなかったので、子供の校則の厳しさと無意味さにびっくりしました。
眉を整えて綺麗にすることも、透けないように他の色の下着をつけることも、そんなに悪い事でしょうか?
これらの校則に違反をすると、子供に指導して反省文を書かせ、放課後に保護者を呼び出し、保護者は子供と一緒に指導を受けるというこの一連の作業、本当に時間の無駄だと思います。
どの校則も失くして良い内容ばかりです。
教員にとっても生徒にとっても、細かすぎる校則はデメリットでしかありません。
部活動の強制加入と毎日の練習(ブラック部活)
子供たちの中学は部活動に必ず入部しなければなりません。
生徒の数が減っているので指導できる先生の絶対数も少なく、部活動の種類が以前に比べて随分減りました。
子供たちの中学には陸上部も剣道部も水泳部もありません。
教員の数が足りないがゆえに、サッカー経験者の先生が未経験の野球部顧問をしていたり。
そんな状況でもわが校は部活動は強制参加となっています。
外部の公式野球やクラブチームに所属している生徒もいますが、部活動強制参加というルールになっていますので美術部などに籍をおいています。
理由は「内申に影響がでるから」。
それが本当なら、内申制度も変えるべきかと思います。
また、生徒同士のトラブルが一番発生しやすいのが部活動です。
娘も同じ部活の同級生たちからいじめを受けていましたが、絶対加入のルールのために辞めることができませんでした。
娘は吹奏楽部でしたが、朝昼夕の練習、土日祝も練習。
部活動を休むと顧問や部員の雰囲気が悪くなるため、家族旅行や塾の合宿にも行けませんでした。
子供たち、特に中学校は勉強と部活動と学校生活にすべてを捧げるしかありません。
興味がある事に時間を費やすことも、学校生活から距離を一歩置くことも許されない窮屈な生活です。
でも、教員も生徒と同じく全てを学校生活に捧げざるを得ないのが現状です。
部活動の強制化、毎日の練習が教員に与える負担は計り知れません。
大阪府立登美丘高校のダンス部は世界大会で準優勝するほど有名ですが、指導者のakaneコーチは外部指導者です。
akaneコーチは振付師として演技指導を徹底的に行いますが、部活の運営や部員の管理は顧問の先生や生徒たちの自主性に任せています。
従来のやり方を踏襲して学校の先生が部活動のすべてを負担するべきではないと思いますし、外部指導者に委託もできるでしょう。
毎日部活の練習をする必要もないですし、強制参加にする必要もないのです。
前時代的な授業方法
教員が一人で大勢の生徒に対して授業をし板書して、生徒はそれを書き写す。
日本の最も一般的な授業形態、一斉授業は明治時代と何ら変わっていません。
生徒から次々に質問がとぶわけでもない、一方向の授業。
これでは理解できない所を理解する事はできず、伸びる生徒は伸ばせず、ついていけない生徒はついていけないままです。
欧米諸国ではICT機器が授業に当たり前に活用され、生徒個人の能力に合わせて学習が進めることができますが、日本はどうなっているんでしょうか?
ICTを活用すれば、教員は教材を選んで使用するだけで、授業内容を一から準備する必要もありません。
毎時間クラスを移動する度に同じ内容を一から黒板に書く必要もありません。
ICTの導入で教員の負担は減らせるのではないでしょうか?
少なすぎる教育関連予算
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、2015年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める支出割合は日本は2.9%、調査した34カ国中で前年に続き最も低いという結果が出ました。
ちなみに34か国の平均は4.2%でした。
絶望的な結果です。
国にはもう少しお金の使い方をきちんと考えていただきたいと思う今日この頃です。
まとめ
教員は教育の要です。
なのに、日本の公立校の教員がおかれている労働環境は劣悪です。
今すぐに動いて解決をしていかないと、この先どうなるのか本当に不安です。
- 給特法の改正で労働時間の上限を設定
- 教員の増員
- 学校の業務を減らす
最近高校生の娘が「将来小学校の先生になりたい」と言うようになりました。
不登校だったのに教員になりたいと希望するのは、不登校だったからこそ学校教育に対して色々考える事が多かったのだと思います。
また不登校だったからこそ、素晴らしい先生方に出逢えたという事もあります。
が、現状では娘が教師の道に進む事を心から応援してあげることは難しいです。
本人の将来なので本人の自由ですが、「いいやん、がんばって!」と素直に言ってあげられない事が親としてとても辛いです。
今すぐにでも教員の労働環境は改善され、生徒は満足のいく教育が受けられる国になるよう、心から希望いたします。
今日はこの辺で。
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